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おれは独協埼玉越谷病院に入院することになっちまった。
しかし、命があるなら入院もいい経験に・・・
最初に入れられた病室はやばかった。
入ってすぐに、入室のあいさつをしてみたものの、
身体から管が無数に出ている人から、
ダースベイダーまたはウォーズマンみたいな呼吸音をたてているひとまで、
かなり重度の患者が集まるナースステーションに一番近い病室だった。
「おれってそんなにやばいのかよ!?」
病院は生き死にの修羅場だ。
おれはかなり憂鬱になってしまった。
実は空いているベッドがそこしかなかったからだったんだが、
病に打ちひしがれるおれにはかなりこたえた。
普通病室は6人部屋なんだが、おれ以外は一人でトイレに行くことも困難なじーさんたちだった。
おれも安静のため、常に車椅子だったが、
看護婦さん達の目を盗んでは、うろうろしていた。
おれは8階の内科病室だったのだが、1階の売店に行っては日課の立ち読みをしていた。
あるとき、立ち読みをしていたら、点滴に血が逆流して面倒なことになった。
意識は朦朧としているくせに、マンガは切り離せなかったりする。
病状を見るために薬を切られたおれは、意識を失いかける日々が4,5日続いた。
まぁインフルエンザのときにはよくあることだ。
こんなことに慣れていてもうれしくないが、平気だった。
が、担当の医者が大学出たての若者なのが不安だった。
よく考えれば、大した病気じゃないからこそ若手が出てきたのだろうが・・・
入院なんてしたことのないおれにはかなり不安だった。
CTスキャンやら、エコーやらの検査を受け、
特定の内臓が普通より1.5倍でけえ。腫れまくってる。
とか言われ、かなりショックだったりした。
肝臓の壊れ方がわかる血液検査の数値によると、
通常20という数値が、おれは1500を超えていたりした。
おいおい・・・と思いながらちょっと状況を楽しんでいたりした。
リンパ腺が腫れまくっていて、見舞いに来てくれた母親や妹は、
おれがかなり太ったと勘違いしていた。
1週間を過ぎる頃、おれは病室を移動された。
病状の比較的軽い患者のいる病室だった。
おれは急に意気揚々として、入院生活を楽しむ算段を練り始めた。
医療の現場に立ち会える機会なんてそうそうない。
これはいいチャンスだぜ!
余裕の出てきたおれはそんなことまで考え始めていた。
もっとも、1日の大半を寝て過ごさなければならない状態ではあったのだが。
残念なのは内科病棟には年寄りしかいなくて、一番の若者がおれだったことだ。
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移動された病室がやばかった。
その病室には「主」がいた。
入院の掟として、起床6時、就寝9時が決められていた。
が、もともと病人なので、そんな決まりは別に守らなくていい目安だった。
おれは医者になるべく寝ていろといわれていることもあって、
できるだけ寝ているように勤めた。
食後は内臓を休めるため、1時間は寝てなければならなかった。
また、なるべく横になって臓器に血液を行き渡らせることがおれの治療のテーマだった。
おれはドア側のベッドにいたのだが、
部屋の人は、向いの人とその隣の人は優しいじいさんとミドルなかんじだった。
あるとき、窓際のじじいがおれの向かいのじいさんと語っていた。
「最近の若い奴はなってねえんだ!」
「起床時間の6時になっても寝ていやがる!」
「最近の学生は就職してもつかえねえんだ!」
「飯食ったらすぐ寝やがって会話もしねえ!」
とか、まるで他人のことのように話していたが、
しばらく聞いてるうちに、おれへのあてつけだということが分かってきた。
寝てなきゃいけねえんだからしょうがねえだろ!このくそ梅干しじじいが!!
とか思ったが、文句を言う気力もない上、病室の雰囲気を悪くしたくないアダルトなおれは気づかないふりをした。
ところが、じじいの文句はとどまるところを知らず、
おれはだんだんストレスフルな毎日を送るようになっていった。
やつは病院をじじいのコミュニケーションルームと勘違いし、
他の病人が寝ることを仕事としていることに微塵の配慮もしなかった。
このうんこじじいが・・・
ケツから手ぇつっこんで心臓引きずり出して顔にぶちまけてやろうかとも思った。
病気のときはとかくストレスに弱い。
しばらくは寝苦しい日々が続いた。
他のじいさんやミドルがさりげなくおれに気を使ってくれるのがすごくうれしかったが、
くそじじいはジジイパワー全開だった。
他の4人の患者も、このじじいをなんとなく恐れていて、
しぶしぶ6時にはつらつと起床して、話を合わせている風でもあった。
だいたいおれへの文句も直接言わず、おれの向かいのじいさんと話してる風で
あてつけてくるところがかなり腹立たしかった。
「今時の若いもんは・・・」
なんていう偏屈じじいがこの世にいるとはおもっていなかったが、
考えを改めざるを得なかった。
看護婦さん達にクレームつけても、
「あの人はああいうひとなんだよね・・・ごめんね。」
とかいわれておしまいだった。
普通なら腹立たしいんだろうが、サービス精神旺盛なおれには
年もそう変わらないナースに本気で苦情を申し立てることもままならなかった。
それに、くそじじいも、長いこと入院していて退屈なんだろうな。
とか思うと、心やさしいおれはなんだか我慢してやってしまっていた。
おれは一時的な症状はきついが、安静にしてれば2,3ヶ月で治る病気だった。
じじいやミドルは症状は軽く見えるが、病状としてはおれよりずっと重かったのだ。
ステロイド服用の副作用で毛が抜けまくっていたりした。
むかつくけど我慢しているおれのテンダネスにじじいはまるで気づく様子はなかった・・・
そのまま時は過ぎ、ようやく自力で歩きまわれるキョカを得た。
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