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アナウンス「只今東海地方を中心に非常事態宣言が発令されました。住民の皆様は、速やかに指定のシェルターへ避難して下さくい。繰り返します。只今」

シンジ「・・・使徒だ。」

 

 

NEON
GENESIS
EVANGELION
EPISODE:19'

I'm the doll which doesn't have a neck.

 

 

 

 

 

 

身体の中へ無理に押し込められたかのような頭部を持つ、ヒト型。

その巨体は宙に浮かび高度を下げないまま滑るように前進する。

先が二つに分かれた下半身は、足を切断した身体障害者の脚のように見える。

 

「第十二使徒、力の神ゼルエル襲来。現在戦略自衛隊が迎撃中。」

 

 

ダダダダダダダダダダ



































ダダダダダダダダダダ

 

 

 

地より爆発音と共に放たれる光の雨

光は重力に反逆し天の使徒に炸裂する。

だが爆発は、そのモノの存在を揺るがすに至らない。

 

天使の頭部が閃光を生み、

光の十字架が都市に投げ落とされる。

 

 

 

 

 

轟音

 

「第1から第18番装甲まで損壊!」

脅威に呆然となる日向。  「18もある特殊装甲を、一瞬に」

「弐号機発進!迎撃位置へ」

「弐号機には目標がジオフロント内に侵入した瞬間を狙い撃ちさせて。」

 

 

ジオフロントの天蓋に大穴が空き、爆炎の中使徒の頭部が穴から突き出る。

骸骨のような顔。眼球も舌も持たない目と口、内側は空洞。

アスカは、その影を睨み、照準を合わせ、レバーのスイッチを握る。

かちゃり

弐号機がライフルを乱射する。

焦燥

 

「このおぉぉぉぉぉ!!!」

爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発

「ATフィールドは中和してるはずなのにィ!」

爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発

「なんでやられないのよ!」

爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発

 

 

使徒の軸は右にも左にもずれずに、まっすぐ降下、前進する。

肉の表面を高熱がなでつけるが、焼けることも、崩れることも、起こらない。

ライフルの照準が使徒の身体を離れる。
外れた弾が周囲の森を破壊する、根ごと掘り起こされた樹が葉を散らしつつ燃え砕けて吹き飛ぶ

使徒の肩から垂れた極薄の腕、ぱたぱたとまるで折り畳まれた紙が広げられるように、だらりと延び、

瞬間。

 

「!!?」

空を裂く音を立てながら弐号機の両腕に迫る。

 

湖に、巨大な腕が落ちる
巨大な音
鮮血が舞い散り、湖面に赤い斑点を作る

ぶしゅう
液体吹き出す
真っ赤な戦闘服
肩から先が生む、激痛 虚空 無意識

イキ      

「・・ウうぅっぅ・・・!!」

 

 

終わるいちばんいやなところにいっ負るこのままいく終わるイヤきえイタイて敵あいつにイヤここいたいタオス痛オシコメル嫌殺すつれだされるくずれるわりたくないイないな嫌いてきまえのてきおしるてきにんぎもくひょうカタイころないナイなナイナ負けるいんいやなとろおしこる敵殺殺進むイ嫌殺何で私が負けこの私ける訳にはかなよ

激痛が瞬時に憎しみへと転化
堅く閉ざされていた眼が、まなじりが裂けるほどに見開かれ

「こんちくしょおおおおおおおおおおおおおお!!!」

    ネルフ中央作戦室、モニターに映る、凄まじい形相で死に向かうアスカ。叫ぶミサト「アスカ!!!

全神経接続をカット早く『ざくっ』

血液。吹き飛び、第6シェルターに突っ込む弐号機の頭部。露出する脊椎。

 

「避難訓練?あんたバカぁ?私たちパイロットには、関係ないじゃん」

 

 

 

 

「弐号機大破!戦闘不能!」

「アスカは!?」

「危険です!!致命的な外傷及び重大な神経損傷を負いました、このままでは」

ミサトの背中を駆けめぐっていた冷たいものが、より一層冷たさを増す。

 

モニターに映し出される弐号機内コクピット。照明は非常灯のみで、薄暗い。

操縦席に覆い被さり動かないアスカ。首から止めどなく流れ出る体液により、辺りは汚れている。

顔は見えない。息をしている気配は感じられない。

糸が切れたようにだらんと垂れ下がった血染めの腕は、ときどきピクンと痙攣する。

それだけが、アスカの生の証拠となりえた。

 

 

「パイロット救出して!!」

「今は無理です!!使徒は健在」

モニターを見つめるリツコ。「この傷だと、エントリープラグを射出するわけにもいかないわね。」

「・・なんとかしてよ!こんなに血が流れて、このままじゃアスカ

『使徒、移動を開始!!』

青葉の叫び、全員沈黙。

モニターが切り替わる。首のない弐号機の横を通り過ぎていく使徒の姿。

「弐号機パイロット、心音微弱!」

 

 

 

シンジは、耳を塞いだ。

一瞬後、発生した累々たるシカバネ。

すぐ目の前のタイルにまで飛び散った、人間の血。血の匂い。

   「ぎゃああああああああああああああああっ」「第6シェルターに、直撃!」「・・・・!」       「第6シェルターは放棄!生きてる者は、第3シェルターへ急がせろ!」「ああ、ああっ、」  「・・・・・・・・」         「うわっ」 「ああああああああっ」「出口はE-8cです!皆さん落ちついて行動して下さい」 「・・・・・・・・・・・・」      「お母さん」「皆さん、出口はこちらです」「・・・・」「うえぇ」「・・・・・・・・・・」         「ここです、この下です、助けて下さい」    「・・・・!!・・・」「ふ、うあ」「しっかりしなさい」  「ううう」               「!・・・・」「・・痛いよ」「大丈夫ですか、立てますか?」「臭い」「痛い」「・・・・・・・・」     「・・ひゅうううう・・・ひゅううう」「くそ・・抜けない」 「死ね」       「落ちついて行動して下さい、出口はこちらです」 「何してんだよ」 「ほらしっかりしなさい」    「ああ・・すみません」 「・・・えぐっ、」「落ちついて行動して下さい」       「・・・・・・・・・・・・」     「・・」「落ちついで行動して下さい」     「落ちついて行動して下さい」 「落ちついて行動して下さい」「おい!」「落ちついて行動して下さい」  「落ちついて行動して下さい」「落ちついて行動して下さい」「落ちついて行動して下さい」「落ちついて行動して下さい」

群衆に突かれ流されるままに、出口へと向かうシンジ。

自分の心臓の音が、まだ聞こえてきて止まらない。

ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、どくん、ドクッ、ひぃ、ひぃ四つの眼を持つ巨大な生首、四つの眼弐号機アスカ、アスカ首、首潰され死んだ人、撥ね飛んだ脚、腸見える死体、紫の血まっかな血、降ってきた瓦礫降って来た生首、四つの冷たい目死体死体死体、

・・死体。

子供が泣いている、子供が死んでいる、死んでいる吐いている、汚い。気持ち悪い

 

・・・

「ケガ人は第6ブロックへ」

空で響き続けている爆音

「無事な者は第3シェルターへ急がせろ!」

空で響き続けている爆音

「急げ!」

空で響き続けている爆音

「早く」

空で響き続けている爆音

、何してる死にたいのか」

空で響き続けている爆音

「君」、僕。

僕の事。

 

シンジは、砂利道の脇にある森林、その奥の巨人を見つけ、見つめる。

首も腕も無い、病める石像。血みどろの弐号機。

・・・

空で響き続けている爆音

・・・・

 

空で響き続けている爆音

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

シンジ、溜め息を吐く、視線は足下へ堕ち、

やがてしゃがみ込む。呆然と、空を見る。仮面のような無表情で、天を仰ぐ。

「・・・・」

硝煙の匂い、埃っぽい空気、遙か上方で爆炎が上がっている、灰が降りてくる

突然の声

 

「シンジ君じゃないか」

 

「!?・・・加持さん」

加持、ゆったりとシンジに歩み寄る。その手には緑色のジョウロが握られている。

空で響き続けている爆音

「何やってるんだ?そんな所に座り込んで」

 

 

「・・・」

「・・・まず、立ちなよ」

 

空で響き続けている爆音

シンジはしゃがみ込んだまま、立とうとしない。
立てた膝に額を押しつけ、黙っている。
加持、シンジのもとへ近づく、その右隣にしゃがむ。
しばし沈黙。やがて、加持は尻を地に付け地面にベタっと座り込む。
顔だけをシンジの方へと向ける。
シンジはうつむいたまま。

「大丈夫か?」
「君は何でこんな所にいるんだ?」

「・・先生の所に帰ろうと思ったんだ」

「先生?」

「うん。ここに来る前にいた所」

「帰りたいのか?」

「・・・・・」
「僕もうエヴァには乗らないから」

「人が死んでるんだぞ」
「逃げるのか?」
「怨まれるかも知れないんだぞ」

「・・」

「・・と、みんなは云うだろう?」

「知ってるんでしょ、みんな」

「ああ」

「加持さん。僕、」
「・・嫌なんだ」

「君は父親を倒そうとしてるんだろ」
「立派さ」

「・・」

 

「加持さん」
「・・避難所に行かないの」

「まだ水やりが終わってない、」
「西瓜の」

「・・」

「はは、」
「俺が生きていると感じる瞬間さ」
「何かを育てて、何かを残す」
「いいよ、こういうの」

「・・」

「死ぬときは、ココで」
「西瓜と心中さ」
「葛城の胸の中もいいが、」
「やっぱり、ココにいたい」

「・・」

 

「僕は」
「先生の所にいたとき、ずっと」
「こんな感じだったんだ」

「・・」

「先生、僕の事を今の加持さんみたいに」
「諭した事があった」

「・・」

「そっくりだよ」
「本当に・・ッ」
「嫌なんだ、もうあそこは!!」

シンジ、目に涙が溜まる。鼻をすすり、弱々しく立ち上がる。
フラフラとどこかへ行ってしまいそうになるシンジ、加持はその腕を無言で掴む。
シンジ、立ちすくむ。加持は手を離す。

「・・」

「・・何処にも・・帰る所が無いんだ」
「僕は・・」

「アスカは、死んだよ」

「・・」

「いや本当はまだ死んじゃいない」
「でも、酷い出血なんだ」
「神経もズタズタにやられてる」
「使徒はまだ生きてる」
「ネルフの隔壁が危ないみたいだよ」
「使徒が地下のアダムと接触すれば」
「人は、全て滅びる」

「・・」

「俺はもう何も云わないよ」
「自分で考え、自分で決めろ」

「・・」

「後悔しないように、」
「動くんだ」

「まず体を動かせ!」
「でないと何も出来ないぞ」
「ただ、後になって後悔するだけだ」

加持、シンジのもとを離れていく。西瓜畑のほうへと歩いていく。
シンジ、無言、突っ立っている。

西瓜畑。蔓。大きな葉と、絡まった蔓の間に丸い実がなっている。
ジョウロから水を注ぐ加持。

空に響き続けている爆音

 

地響き。

西瓜の葉が、揺れ続けている。
遠くで響く爆音は、このドーム内でエコーし何重にもその脅威を増殖させる。

加持は死を感じている。

死がエコーしている。

 

 

シンジ、無言

 

 

閃光、

ネルフ本部施設、ピラミッドの頂上が、爆炎をあげる。

その防護壁が瞬時に溶解、蒸発する。

 

零号機、出撃。

片腕が無い。残された右腕に、握られているモノ・・

N2爆弾。

 

 

 

 

 

 

 

 

N2爆弾、爆発
使徒、損害0。

 

 

 

 

 

 

 

 

灼熱地獄。炎の中。

動かない零号機頭部に、使徒の腕が突き刺さる。
何度も何度も突き刺さる。

そして、

零号機に向け閃光が放たれた。

 

 

 

Next.... 


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